いよいよ明日はセリの日。
毎日見てきた子牛たちが、新しい場所へ旅立つ。
朝からいつも通りの作業だけど、どこか胸の奥がざわつくような、不思議な気持ちになる。
今回の出場は2頭。
9ヶ月の雌と、8ヶ月の雄。
どちらも母牛譲りの落ち着いた性格で、毛艶もよく、よく食べて、よく動く。
ここまで大きく育ってくれたことが、何よりうれしい。
今日は朝からセリ前の大切な準備。
牛たちをきれいに洗って、毛を乾かして、ブラシで丁寧に整える。
普段はやんちゃな雄の子も、今日はどこかおとなしい。
まるで明日をわかっているような表情をしていた。
1頭1頭を洗いながら、いろんな瞬間がよみがえる。
生まれたときの鳴き声、初めて立ち上がった夜、ミルクを飲んでくれた朝。
元気に走り回るようになった日も、どれも昨日のことのよう。
この数ヶ月はあっという間だったけど、濃い時間だった。
家族も手伝ってくれた。
子どもたちはブラシを持って「ピカピカにしてあげる!」と笑いながら牛を撫でていた。
そんな姿を見て、少し胸が熱くなった。
「この子、明日行っちゃうの?」と聞かれて、
「うん、新しい場所で元気に育つよ」と答える。
寂しさの中に、誇らしさがある。
夕方には書類を確認して、耳標をチェックして、明日の準備が整った。
きれいになった牛たちは、静かな牛舎の中でゆっくりと休んでいる。
外では風が気持ちよく吹いて、空が少し赤く染まっていた。
旅立ちの前夜にふさわしい穏やかな時間だった。
今日という日は「感謝」でいっぱい。
元気に育ってくれた牛たちに。
支えてくれた家族や仲間に。
そして、日々の積み重ねが確かに形になっていることに。
明日は、いよいよセリ本番。
笑顔で見送ってあげよう。


コメント