こんにちは、たくみです。
沖縄県・多良間島で黒毛和牛の繁殖農家をしています。
「黒毛和牛の繁殖農家って、1年を通してどんな仕事をしているの?」
そう聞かれることが多くあります。
でも実は、牛の個体差や農家の方針によってやることは大きく変わります。
今日は、多良間島での実体験をもとに、農家のリアルな一年をご紹介します。
📅 黒毛和牛繁殖農家の一年(多良間島スタイル)
1〜3月|出産と育成スタート(農家によって時期は異なる)
この時期は、うちでは出産が重なることが多いです。
ただ、繁殖のタイミングは農家によって違い、年間を通して分散出産している農家もいます。
出産後は、初乳(最初の母乳)をしっかり飲ませることが命を守る鍵。
夜間の見回り、哺乳補助、温度管理など、神経を使う日々が続きます。
子牛は生後1ヶ月が一番弱く、下痢や低体温、感染症などへの対応が重要です。
4〜6月|人工授精と草の収穫(多良間島では自然交配なし)
この時期は、人工授精(AI)を実施する大事な季節です。
母牛の産後回復を確認しながら、発情の兆候を見極めて種付けをします。
💡 多良間島では自然交配は行われておらず、すべて人工授精です。
ただし、やり方は一律ではありません。
- 回復の遅い牛は見送り
- 子育て中の牛は体調を優先
- 個体ごとの繁殖成績も考慮
一頭一頭を見ながら、「今、その牛にとって最良の判断」をするのがこの時期の仕事です。
また同時に、畑の牧草収穫もあり、体力勝負の季節でもあります。
7〜9月|猛暑と病気に注意する季節
沖縄の夏は非常に暑く、子牛には特に過酷な時期です。
この時期は、
- 子牛の下痢や熱中症の予防
- 通風と床の衛生管理
- 水分補給の徹底
が大切で、管理の精度が問われる季節です。
病気を防げるかどうかで、秋の出荷成績が大きく変わるため、気を抜けません。
10〜12月|子牛の出荷と来年への準備
生後7〜9ヶ月になった子牛を市場へ出荷します。
セリの開催スケジュールに合わせて体重・毛づや・骨格を整えていきます。
自分が育てた子牛が高評価で落札されると、言葉にできない喜びがあります。
出荷後は、
- 牛舎の掃除や整備
- 繁殖計画の見直し
- 来年の繁殖スケジュールの再設計
など、次のサイクルに向けた仕切り直しの時期になります。
🐂 命をつなぐ、という仕事
黒毛和牛の繁殖農家は、毎日が命と向き合う仕事です。
- 牛には一頭ごとに個性がある
- 繁殖も育成も、マニュアル通りにいかない
- 日々の観察と判断が、命を育てる基盤になる
だからこそ、大変だけどおもしろい。
そして、家族や地域と命をつなぐ誇りがあるのがこの仕事です。
✅ まとめ
黒毛和牛の繁殖農家の一年は、天候や市場、そして牛の状態に合わせて臨機応変に動く必要があります。
特に多良間島のように人工授精が基本の地域では、観察力と判断力が問われる仕事です。
命を預かるプレッシャーもあるけれど、
生まれてきた子牛が元気に育ち、立派に旅立っていく姿は、何にも代えがたいやりがいです。
これから繁殖農家を目指す方にも、
「こういう生き方もあるんだ」と知ってもらえたら嬉しいです。
コメント